2011/03/14

あなたへのランタン



今日うちの店に、
70代前半らしきご夫婦が見えた。


探し物らしかったので、
「お探し物でしたら、おっしゃって下さいね」と
声をかけたら、
電池式のランタンを探しているという。


うちの店にあるような雰囲気重視の
たよりないインテリア照明ではなく、
もっと実用的なのはないかと、聞いて来る。


災害用かな?と思った。


お客様の言われる商品は、残念ながらうちには無く、
奥様がつかれた様子だったので、
「どうぞよかったら、おかけ下さい」と座ってもらった。


お二人の前に立っていろいろお話を聞くと、
ホームセンターなど何件か回ったけれどどこにもない。
息子さんの経営する飲食店が東京にあり、
停電の時間帯に店内を照らすランタンが必要なのだと言う。
それも今日すぐに送りたい。


暫くの間、
「電池は使い捨てではなく、
 充電式の電池が良いかも知れませんね。」とか、
「どうしてもランタンが手に入らなければ、
 懐中電灯を吊るしてもいいかね?」とか、
「今運送便は1日2日送れるようですよ。」とか、
10分程話し込んだ。


年老いたお二人は探しまわった疲れで、
少々顔色も悪く、
私がお話を聞くうちに心を開いてくださって、
逆に気を抜いて疲れが出てしまった様子。


「あーあ。どうするか。」と投げやりになってきたので、
私は「良かったらお茶飲んで行かれませんか?」
と誘うと、ご主人は
「いやー悪いからいいよー」と遠慮、
奥様は本当にきつかったようで、
「お茶いただこうよー」とご主人に言う。
私はよし、今だ、と思い
「では、少しお待ち下さいね」とあわててお茶を淹れに走る。


休憩室で、
良い方のお茶を美味しく淹れて、
すぐにお客様のもとに戻った。


お茶をお出しすると、
急に静かになって、お茶に集中しているようだったので、
私はそっと席をはずして、カタログでランタンを探してみた。
あった。でも取り寄せ。


しばらくするとお二人はにこにこ顔の元気な状態で、
お茶有り難うございますね、美味しかった。
とお湯のみを下げて来て下さった。


わたしは、
「もしお取り寄せでよろしければ、
 いつでもおっしゃって頂ければ、
 お力になりますので」と言った。


奥様は
「そうね、その時は是非お願いにあがります。
 また別の買物にも来ますから。
 ありがとうね。」
と言いながら、笑顔でお帰りになりました。


東京でがんばっている息子さん。
ごめんなさい!
お役に立てませんでした。


でもあなたの為に懸命に「何かしてやりたい」
というご両親の愛がひしひしと伝わって来ました。
お二人寄り添って、
探しまわっているのです。


あなたへのランタンを。


  
  

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