2011/05/23

勝利の赤絨毯の上を歩き続ける人生よりも。



あきらめる、と言う事、
悪い事じゃない。


何かに向かって突き進んでいるとき、
あきらめる、とは、
マイナスの要素でしかない、
と言われて育っても、


あきらめなければならない場面は、
誰にでも訪れる。


弱腰になってあきらめる事もあれば、
誰かの為にあきらめたり、
強制的にあきらめさせられたり。
理由はどうあれ、
本人は膝を折るわけだけれど、
それはその人の糧になり、
その人の優しさを形作って行くのではないかと思う。


目標に突き進んで、勝利を勝ち取るのもいいけれど、
その先に何も無い事だってある。
もともと勝ち負けに興味の無い私。
むしろ私個人としては、
勝利の赤絨毯の上を歩き続ける人生より、


つつましくあきらめたり、
涙を飲んで挫折したり、
失敗したり傷ついたりする、
遠回りの優しき人生が、
抱きしめたいほど、愛おしい。






   

2011/05/22

沈黙のとき



沈黙を怖がる人がいる。


会話が途切れると、
あわててしゃべりだす。


どうしてかな?


なにを怖がっているのか、
初対面でもなく、
気を使う間柄でもないのに。


私は気にしない。


一緒にいる。
それだけでいい。
会話も好き。
沈黙も好き。






   




   

2011/05/20

1人1人がインディアンの名前のように持っているもの。



人は誰しも心の奥深くに、
表に出すことのない思いや、
感情を持っている。


それは一生表には出さないかも知れない物で、
その人しか知り得ない、
奥深く複雑にからみ合った思考の結晶。


笑いながら生活を送り、
心の中で泣き続けている人もいる。
そこが自分の居場所じゃないと感じている人も。
持ちたくなんかないのに毒を持っている人もいるだろうし、
悪魔と同居して苦しんでいる人もいるだろう。
愛であふれているのに、
それを解放出来ない人もいるだろうし、
空虚を持て余している人もいるだろう。
本人さえ気付いてないかも知れないけれど。


人間のそういう部分は、
ある意味、表面に見えている物よりも
遥かに大きく、
心の中と言ってもその体積は宇宙程もあるのでは、
と思えてしまう。


私は、
人間の奥底にある、
深海のような、霊峰のような、
大きさの計り知れない精神。
1人1人がインディアンの名前のように持っているものや、
それを取り巻くすべてが、
そう言う物があるという状況が、
とても好きだ。




  

私の色見本帳 No.3



ヨーロッパの石畳の広場。
日陰で暗いスペースの回りを、
古いレンガの建物が囲む。


その広場の真ん中辺りに、
石畳の間から、
真っ青なガーベラが一輪真っすぐに立つ。
着けたもの皆非業の死を遂げると言われる
呪われたサファイアの青色。
深く吸い込まれそうな完璧な青。


それを感慨深くみつめる私は、
地面すれすれの位置から視線を送っている。


ちょうど、
良い写真を撮ろうと、
地面にうつぶせになっている、
そんな位置。


ただそれだけの夢だけれど、
空気のひんやりした感じと、
土の匂い、
ガーベラの強い青が、
私の身体に今もまとわりついている。


その青が好き。




   
   

2011/05/19

DNAに書いてある海の事。



ここから海へ行こうと思ったら、
車で45分かかる。
ふらっと行くには、
少し遠い。


海は好きだ。


いつまででも眺めていられる。
眺めていたい。


車を走らせて、
海が近くなると、
空気の香りでわかる。
そういうのも、素敵だ。


遠くに海が見えて来ると、
ハッとする。
そこに海があると初めからわかっているのに、
ドキドキする。
海に対して何かあるのだ。


個人的に何かある、
と言うよりも、
人間としてDNAに何か書いてあるのだろう。
そんな感覚。




   

なんの前触れも無く突然耳に飛び込んで来た曲。



佐野元春の”情けない週末”と言う曲を
最近あるきっかけで久しぶりに聴いた。


初めて聴いたのは学生の頃。


その頃の自分は世界の中心にいて、
まだ自分のなにもかもが薄っぺらで、
恋の深みも知らなくて、


この曲もただ
「いい感じの曲」とだけ受け取っていた。


20年以上経って
なんの前触れも無く突然耳に飛び込んで来た時、
まったく心構えしていない私の、
深くなって少し傷のついた器にずっしりと入り込んで来て、
涙があふれそうになる。
今なら歌詞が痛い程刺さって来るから。


ただ、今の私にはその痛みをこらえる事も出来るだけに、
それもまた虚しい。


でも、日常生活では片鱗さえ見せないけれど、
こんな激しい感情が自分の中にあって、
それを押さえ込み続けていると、


自分がとても今を生きていて、
孤独の中、どうしていいかわからないけれど、
このままでいい、と言う気もするし、
この感情を持ちながらいつか死んでゆくのも、
とてもロマンチックだとも思える。
   




   



1人で街に出ている時、夕暮れ時を迎えると、


人恋しくなる。


雑踏の中、見上げると空はまだ、


夜になりきれずに、


青が濃く残る。


歩く人と肩がぶつかり、


はっとする。


立ち止まったりして、


私は、何を考えていたのだろう。


通常の生活とは別の、


私のとても個人的な感情の世界。


そこに住んでいる、


ある住人の事を、


気付くと考えている。


涙が出そうな程に。