2011/05/08

見た瞬間に、決まるらしい。 人生に必要かどうかが。



うちのお得意様で、
目の肥えた器道楽のお客様がいる。


今日も見えて、
ある芸術品のような急須を、
「急須なんていくらでもあるのよ。
 使わんとに、買ってしまうとよ。
 もう、これ、病気よ。」と言いながら、
お取り置きして行かれた。


その方は、
目につくもの、気に入るもの、
高価な物ばかりで、
値を言うといつも、
「そうでしょ?だってこれ、とてもいいもの。
 素敵。」と、高いと言う事に対して満足げだ。


しかしながら、
人の財布の中身をとやかく言うのは失礼にあたるけれど、
そのお客様は、多少裕福とはいえ、
大金持ちではない。
高価で必要ない物を取り付かれたように買ってしまい、
しまい場所にも困るだろうと、
いらぬ心配をしてしまう程だ。
いっそのこと、ご自宅で展示会でもされたらいい、
と提言すると、
「やだ。こっそり集めてるの。うちの人には内緒なのよ。
 見つかったら、怒られちゃう。」
と言う事情らしい。


それにしても、
その方の審美眼には舌を巻く。
古風な焼き物から、
つるりと白い洋陶器、
また、若い芸術家の斬新な作品まで、
幅広く愛し、鋭い嗅覚で、広い店内から探し当てる。
選ぶ物は洒落ていてなおかつ、
手の込んだ物、
すなわち、芸術作品、工芸品レベルの、
使うと言うよりも、美術館に展示しておくべきような物ばかり。
実際それらは、殆ど使わないで眺めるだけだそうだ。
そして、決めるのが早い。
見た瞬間に、決まるらしい。
人生に必要かどうかが。


ちなみに、その方は男性です。
限りなく女性に近い男性です。
その方の「うちの人」も男性。
感性がゆたかです。






   

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