2011/05/12

陰と陽




海を眺めていると、
時を忘れる。


見るとも無しに見ていると、
「今見ているこの海は、
 地球上のすべての海とつながっていて、
 猛り狂っているところもあれば、
 静かに凪いでいるところもあり、
 陸地よりも広くあって、この星を構成している。
 地球の引力で、水がたぷたぷと、
 地球に吸い寄せられ続けているんだな。
 中に命を宿しながら。
 すごいな。」
などと考える。


海には命のみなもとがこんなに豊かにうねっていて、
莫大なライフサイクルがあり、
目に見えない恵みが溶け込んであり、
地球上すべてのサイクルの根源のようなものがあるのだ。


同時にそこは、人間が生きて行けない世界。


原始の頃、海で生まれたはずの生命は人となり、
今、陸上で走り回り、笑い、食べて、安らかに眠る事は出来るが、


ひとたび、故郷であるはずの海に入ると、
身体の自由を奪われ、視界も不明瞭、呼吸さえ出来ない。
数分で死に至る。


美しさにため息をつき、
その得体の知れない深みに怖れを感じる。


陰と陽。


なにもかも、そんな風に出来ているようだ。






  

0 件のコメント:

コメントを投稿