海を眺めていると、
時を忘れる。
見るとも無しに見ていると、
「今見ているこの海は、
地球上のすべての海とつながっていて、
猛り狂っているところもあれば、
静かに凪いでいるところもあり、
陸地よりも広くあって、この星を構成している。
地球の引力で、水がたぷたぷと、
地球に吸い寄せられ続けているんだな。
中に命を宿しながら。
すごいな。」
などと考える。
海には命のみなもとがこんなに豊かにうねっていて、
莫大なライフサイクルがあり、
目に見えない恵みが溶け込んであり、
地球上すべてのサイクルの根源のようなものがあるのだ。
同時にそこは、人間が生きて行けない世界。
原始の頃、海で生まれたはずの生命は人となり、
今、陸上で走り回り、笑い、食べて、安らかに眠る事は出来るが、
ひとたび、故郷であるはずの海に入ると、
身体の自由を奪われ、視界も不明瞭、呼吸さえ出来ない。
数分で死に至る。
美しさにため息をつき、
その得体の知れない深みに怖れを感じる。
陰と陽。
なにもかも、そんな風に出来ているようだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿