2011/03/24

mimiとおじいちゃんのテリトリー



おじいちゃんは


神経質で、几帳面で、厳しかった。


それに伴って、


猫や動物が嫌いだった。




私は小学生の頃、猫を飼っていた。


名前はmimi。


三毛猫。


家が広かったし、


mimiとおじいちゃんのテリトリーは、


ほぼ重なっていなかったので、


トラブルは全くなかったが、


庭の花壇を堂々と歩くmimiや、


おじいちゃんが手をかけていた池の鯉を執拗に眺めるmimiを、


おじいちゃんが快く思っていないのは、


小学生の私にも、痛い程わかる。




自分の愛する者を他の愛する者が愛してくれないのは、


悲しいけれど、仕方ない。




とにかく、毛嫌いこそすれ、感心など一切持たないおじいちゃんだった。




そんなおじいちゃんがある日言った。


「mimiちゃんは、どこへいったかね?見当たらないが。」




私も、母も、おばあちゃんも、


思わず顔を見合わせた。


mimiがうちに来てから3〜4年経っていたが、


おじいちゃんがmimiの事を口にしたのは初めてで、


「やっと、認めてくれた!興味を持ってくれた!」と、


心の中でとても嬉しく、


それを口に出すとこわれてしまいそうで、


普通を装って「どこ行ったかな?わかんない。」と答えたのを覚えている。


そしてその会話はそれきり終わった。


おじいちゃんは書物に向き直り、少し自分の周りに壁を作った。






その日の夕方、


家の前の道路で、


車にひかれて倒れているmimiを見つけた母。


mimiはもう息をしていない。






おじいちゃんの言葉は、


mimiの死を予感したものだったらしい。


時間も大体その頃だったのだろう。


mimiは旅立ちの時、


孤独に路上で耐えていただろうけれど、


その瞬間おじいちゃんがmimiを想い、


mimiは暖かい気持ちで逝く事が出来たんだと思いたい。


mimiごめんね。


おじいちゃん、ありがと。






ちなみに、今はおじいちゃんも、


mimiと同じテリトリーにいるはずです。


  





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