2011/03/09

Dior "Diorissimo"私にとって最高の香り。



小さな頃、
私がものごころつくかつかないかの頃からの
叔母の記憶。


華やかで、美人で、社交的、
頭が良く、よく気がつく。
そんな女性。


子供のいなかった叔母は、
私をとてもかわいがってくれた。
「桃みたいで、食べちゃいたいくらいかわいいから、
 あなたの名前はももちゃんね」
と、叔母だけは私をももちゃんと呼んでいた。


溺愛と言って良い。
いつも鼻にかかった猫なで声で、甘やかせてきた。


物を買い与える、
何でも先回りして、至れり尽くせりしてくれる、
過剰なスキンシップ、キスの嵐。


絵がうまく、お絵描きの大好きな私に、
たくさんの絵を描いてくれた。


美しいお姫様に、ハンサムな王子様、かわいい動物たち。
ヨーロッパ的な画風で、落書き帳にささっと描いてくれた。


「これ、ももちゃんよ。」と言いながら、
お姫様の絵をよく描いてくれた。
もちろん私とは似ても似つかない、
外国のお姫様の絵。


今思うとあの画風、
あの年代の人にしてはかなりおしゃれだった。
デザイナーの描くデッサンのようだった。


叔母は都会人で、
新しい物をいろいろ教えてくれた。


あるときお土産に買って来てくれたのが、
その頃はめずらしい「クロワッサン」
小さな私は「この世にこんなおいしい物があるなんて」と感激したのを
覚えている。
そんな私に、叔母は遊びに来るたびに、
クロワッサンを買って来てくれたものだ。


また、叔母の家に遊びに行くと、
いろいろな物を私に見せてくれた。
私が純粋に感激するので、
見せたかった気持ちもあったのだろうか?


中でも叔母の寝室の化粧品の入った棚の中の華やかなこと。


螺鈿のようにキラキラ光るパフのケース。
ビーズのじゃらじゃらとたくさんついた、ポーチ。
コンパクトも更に美しいレースの小さな袋に入れてあって、
ボタンが真珠でできていて、
薄暗い寝室で静かに光っていたのが今でも鮮明に思い出される。
粉をはたくピンクの羽毛のような大きなパフ。
技巧を凝らした口紅のケース。
香水の瓶たち。
辺りを漂う良い香り。


私がこの世で一番好きな香水、
ディオールのディオリッシモも、
叔母の家でその香水をつけてもらった幼児体験があり、
中学の頃遊びに行ったときに、
ディオールのディオリッシモの香りに感動していたら、
叔母が使いかけのディオリッシモをくれた。


大人になって香水売り場に行った時、
何とも言えない密やかな華やかな思い出とともに、
改めて本当にディオリッシモが好きになったものだ。
そして、こんなに高価な物だったのかと驚いたのでした。


女性の秘密の城。
化粧品とともに、
香りやきらきらやときめきや喜びの入った棚。
そんな女性の特権があることを、身をもって教えてくれたのが、
私の叔母です。


  

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