2011/02/11

バッハの平均律クラヴィーア曲集から「プレリュード」



この所数回にわけて、
引っ越しの手伝いをした。


昨日が最後の日。


今日その家や土地が、
引き渡されたはずだ。


今はもう年老いた、
美人で独身の叔母の家。


何年も使われていなかったピアノも、
今日業者が引き取ったのだろう。


昨日最後の片付けに行き、
大体済んで、
皆それぞれの仕事や用事に戻って行った。


もう空の家なので、
帰るときは鍵もかけなくていい、
と言われたので、
皆が帰った後、家の中を少し見渡したりしていた。
私だけは休日だったので。


ふと見るとピアノがある。


淋しそうにお利口にしているピアノを見ていたら、
つい弾いてあげたくなった。
そっとピアノの前に座った。


こうやって書くと、
私がピアノが弾けるように思われるだろうが、
「猫踏んじゃった」が完璧に引ける程度のレベルだ。
それと、練習中の
「バッハのプレリュード」


最後のお別れに猫踏んじゃったと言う気分じゃなかったので、
中途半端なプレリュードをおそるおそる弾いた。


がらんとした部屋は、
今まで慣れ親しんだ部屋と違い、
なんだかすました顔で、
私のたどたどしい演奏を聴いている。


後半つっかえながら、
1人、弾いた。
快晴の静かな午後。


ピアノは今日
「長年誰も触らなかったピアノ」としてではなく、
「最後にわたしが心を込めて触ったピアノ」として、
家を出て行った。


 

0 件のコメント:

コメントを投稿