2011/02/13

ながいながい時を経て



叔母の引っ越しの際、
引っ越し先のマンションは手狭になるので、
かなりの物を、処分しないといけなかった。


何でも「もったいない」と言う年老いた叔母にとって、
身を切られる思いだったであろう。
後半は思い詰めたように、
「もうなにもいらない。全部捨てて。」と言う程で、
引っ越しの作業の肉体労働のきつさよりも、
叔母のストレスの方が心配で、つらかった。


私も、着物など何着か貰ったけれど、
それ以上はうちも保管出来ないので、
人に差し上げられる物は、
倉庫に保管して貰い手を待っている。
倉庫ももう、悲鳴をあげているけれど。




ある引っ越し作業の日、
私はお仏壇を片付けていた。


お仏壇の前にお線香等を置いている文机があるので、
お仏壇の下の扉は20年以上開かずの扉になっていて、
私も片付けの際、そこに扉があるのを初めて知った。


その中をすべて出して仕分けしていたら、
「仏教婦人聖典」という浄土真宗の古い本が出て来た。
昭和24年発行
昭和44年改版


叔母は暗い顔で「きりがないから、捨ててくれ」と言う。
私は思う所あって、その本が欲しかったので、
「じゃあ、もらっていい?」と言うと叔母は、
嬉しそうに顔を輝かせてにこっと笑った。


その本自体は色あせてはいるものの、
折れもなく割ときれいだったけれど、
間に何枚も折れたしおりや、
広告の切れ端が挟まっていた。
誰かが読んで、しおり代わりに挟んだのだろう。




そしてその中に、手書きのメモを見つけた。
筆跡は今は亡きおじい様のもの。


読んでみると、たぶん次のような事が書いてあった。
「?」は読めなかった文字です。


  「ああ有り難や 今日の日は
   此の世を去りし父母や
   交わり深き人々の
   在りし昔をなつかしみ
   有縁の人々集いて
   心を浄め身を清め
   佛の御名をとなえつつ
   安けくねむり給われと
   ?ふ貴ふとき法?なり
   姿現世になき人も
   蓮華花咲く浄土より
   此の家のさまをうちながめ
   つづくえにしの法の道
   たやさぬ跡目の安けさを
   さぞや喜び給らむ
   うれしく御受け給ふべし」






















これを見つけて読んで、
おじい様の気持ちが伝わって来て、
私の中でまた何かが少し変化しました。


そしてその時、
その本に長年かけてしみ込んだお線香の、
とてもいい香りがしてきたのでした。






 

0 件のコメント:

コメントを投稿