2011/04/16

先日吉祥寺のある南欧料理の店に行った。



shopに入ると大体どの店でも、
明るい笑顔で「いらっしゃいませ」と
声をかけて来る。


そして
「何かお探しですかあ?」とか言って来て、
「いいえ、ちょっと見せて下さい」とか言うと、
大体引き下がってくれる。


ちょっとしつこいお店になると、
何かを顔を近づけて見つめただけで、
「これ、いいですよね〜」とか言って来る。
「そうですね」としか言いようが無い。


私は売り物をあまり手にとらないようにしている。
汚れるといけないし、
第一売り物はお店の物だ。
買う気もないのにやたらと触りたくない。
もちろん、買おうと思えば手に取ってみるけれど。


いいな、買おうかなと思って手に取ってみたら、
意外と気に入らなかったりしても、
「あ!それかわいいですよね〜」から入って、
商品知識をべらべらーっと並べ立てて、まくしたてて、
怒濤のように押し寄せて来る。


その間私は止める事も出来ずに、
買う気のない商品の知識を詰め込まれ、
気を遣って相づちを打って、
貴重な時間を奪われる。
最後に知恵を絞って、
当たり障りの無い言い方で、
うまく断って逃れないといけない。


そんな、のんびり買物も出来ない店も多々ある。




先日吉祥寺のある南欧料理の店に行った。


夕方入ると、マスター1人。
4人掛けテーブル3台、カウンター10席程度の、
こじんまりした店ではあるけれど、
メニューが多く、手の込んだ料理である。


友人と2人で行って、
少しずつ注文した。


マスターはカウンター内で手の込んだ料理を作りながら、
とちゅう、ちょっとホールに出て来て、
カウンター周りの雑務をさっと済ませたり、
私たちの側まで来て、
飲み物のおかわり、持ってきましょうか?とか、
今◯◯を作ってるけど、
他に今日は◯◯が、おいしいですよ。とか、
強引ではないけれど、適度に営業して来る。


さっとカウンター内に引っ込んで、
料理に集中する間、
友人と話し込む。
小学校からの親しい女友達なので、
かなり話が弾む。
そして、出て来た料理は、とても美味しい。
腹を抱えて笑いながらの会話の合間に、
出て来た料理に「これおいしい〜!」と感動し合う、
そんな幸せな時間。
出て来るタイミングも、とてもいい。
遅すぎず、早すぎず。


こう言ったシチュエーションの場合、
料理をとにかく早く出す、と言う事が、
手際がいいと言う事ではないのだと思う。
仕事中のランチではないのだから。


料理を楽しむ時、
そこには飲み物があり、
雰囲気があり、
会話がある。
料理がどんどん早く出て来て、
会話もそこそこにひたすら食べれば、
すぐにおなかが満たされて、
楽しい時間が終了してしまう気がする。
ゆっくり食べて、
きつい満腹感を覚える事なく、
最後までゆったりと食事する。
そんなテンポで出て来てくれる事が、
どれだけの気遣いの上に成り立っている事か。
考えると頭が下がる。


私たちの後から、
カウンターに他のお客さんが3組入った。
それでも変わらぬテンポで、
マスターは料理を作り、注文を取り、
運び、笑顔で軽い会話、
次のメニューを勧め、またカウンター内に戻る。


友人と2人で1皿頼んで分けようと思っていたら、
マスターが気を利かせてくれて、
2皿に綺麗に分けて盛りつけて、持って来てくれたものもある。


それらの細かい気遣いが、
気取って張りつめた高級な雰囲気でなく、
家庭的な暖かい南フランスの民家のようなところで、
さりげなく行われるのだ。 


途中私が席を立ち、
トイレのあるらしき方向へと行こうとしたら、
料理に集中していたはずのマスターが、
大きすぎない声で「左です。」とすかさず教えてくれた。
何をしていても、ちゃんと目配りをしているのだと、
感心した。


帰り際、出口まで見送りに出て来てくれて、
私は一度店内でくしゃみをしただけなのに、
「花粉症お大事に!」と言ってくれた。
私の花粉症らしい様子まで、目配りでチェックしてたのだと、
驚きました。


だって、忙しかったんですよ。店内は。
すべての業務を1人でこなし、
なおかつハイレベルなクオリティー。
元気で暖かい人柄。
後ろにも目がついていて、
すごい事をしているのに、
緊張感はまったくない。


そして、いいサービスを受けた時にありがちな、
「かえって恐縮してこちらが頭を下げてお礼をする」と言う気遣いもいらず、
明るく楽しく満足出来た。


何年かぶりに親友と会うにふさわしい時間を提供してくれた、
そんな素敵な店でした。






   

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